「タンスの肥やT」をカスタムして、バレエのレッスンウェアに。

「タンスの肥やT」をカスタムして、バレエのレッスンウェアに。

August 14, 2026

ある夏の午後。

Rouge GarnierのUn Deux Trois 9aféを覗くと、いつものコーヒーカップに混じって、テーブルの上には白いTシャツ、色鉛筆、定規、そしてはさみが並んでいた。

どうやら編集部のチエリとイチコが、突然「Tシャツのカスタム」を始めたらしい。

対象となったのは、Maison de 9uatreの店主が数年前に購入した Ballet ManiacsのチャイコフスキーTシャツ

メンズサイズで購入した一枚だ。

チャイコフスキーを中心に、白鳥やくるみ割り人形、トランプなどが散りばめられたイラストは、今でもとても気に入っているという。

好きではなくなったわけではない。

ただ、サイズ感が少し「今」と違う。

レッスンで着るなら、もう少し軽やかだったらいい。

それなら、今の自分がもう一度着たくなる形へ、少しだけ手を入れてみる。

この日の小さな工作は、そんなところから始まったようだ。


まずは、襟を軽く

最初にはさみを入れたのは襟ぐり。

もともとのクルーネックについていたリブ部分を、身頃まで切り込みすぎないように、縫い目を見ながら少しずつ切り離していく。

いきなり理想の開きまで切らない。

一度切る。

広げて眺める。

そして、必要ならもう少しだけ。

Tシャツのカスタムでいちばん大切なのは、案外この「途中で眺める」ことなのかもしれない。

襟のリブがなくなるだけでも、首まわりの印象は思いのほか変わる。

Tシャツらしいかっちりとしたクルーネックから、少し力の抜けた、レオタードにも重ねやすい襟元へ。

切りっぱなしの柔らかなラインも、このTシャツにはよく似合った。


袖は、切らずに二回折る

次は袖。

ここには、はさみを入れていない。

メンズサイズのため少し長く感じていた袖口を、ただ二回折り返した。

それだけ。

けれど、腕まわりが見えることで、全体のバランスはずいぶん軽くなる。

バレエのレッスンで着るなら、腕のラインが見えやすくなるのも嬉しいところ。

折り返しが気になる場合は、目立たない位置を一、二か所だけ軽く縫い留めてもよいと思う。

今回は、それもしなかった。

切らない。

縫わない。

ただ折る。

「カスタム」と聞くと、何か特別な技術が必要なようにも思えるけれど、このくらいでも十分に服の表情は変わる。


裾には、少しだけ仕掛けを

襟の次にしっかりとはさみを入れたのが、裾。

まず実際に着た時のバランスを考えながら、色鉛筆でカットする位置の目印をつける。

そう、色鉛筆。

編集部にたまたまあったもの。

チャコペン?いらない。

今回は裾をすべて同じ長さにするのではなく、片側に結ぶための長さを残した。

 

定規をあてて位置を確認し、少しずつカット。

さらに脇の縫い目に沿って切り込みを入れることで、前身頃と後身頃にそれぞれ結ぶための布端ができる。

最後に、その二本をきゅっと結ぶ。

まっすぐだったTシャツのシルエットに、少しだけ動きが生まれた。

結ぶ位置や強さを変えれば、シルエットも少し変えられる。

レオタードやボトム、その日の気分に合わせて調整できるのも、この形のいいところだ。


最初から完成形を決めなくてもいい

今回、型紙は使っていない。

「襟は何センチ」「裾は何センチ」といった決まった寸法もない。

Tシャツのサイズも、生地も、着る人の身体も違うからだ。

一度着る。

少し切る。

また着てみる。

まだ重たければ、もう少し切る。

そのくらいの進め方がちょうどいい。

一度切った布は元には戻せない。

だからこそ「もう少し切ってもいいかな」というところで、一度止まって眺めるくらいがいい。

少しずつ。

この日のUn Deux Trois 9aféでも、切って、眺めて、また切って、という作業が延々と続いていた。


「タンスの肥やT」は、まだ終わっていない

作業の途中。

何をしているのかと覗き込んでいた『月の星の砂の占の館の導き手』ルナ・カスカトール・カスカベ先生が、麦茶を片手にしばらく白いTシャツを眺め、

「……これは、“タンスの肥やT”ですね」

と言った。

 

たくさん着て、少しくたびれてきたTシャツ。

好きだったはずなのに、サイズ感がなんとなく「今」ではなくなったTシャツ。

捨てるほど嫌いではない。

けれど、なぜか手に取らなくなった。

そんな一枚は、案外どこのタンスにも眠っているのかもしれない。

今回のBallet ManiacsのチャイコフスキーTシャツも、イラストそのものは今でも好きだから、手放すという選択肢ではなかった。

ならば、「今、着たい形」へ少し変えてみる。

襟を切る。

袖は折る。

裾を切って、結ぶ。

必要だったのは、それだけだった。

特別な洋裁の技術がなくても。

正確な型紙がなくても。

Tシャツ一枚とはさみ一本で、まだ遊べる余地は案外たくさん残っている。


一枚の服を、もう一度好きになる

新しい服を迎えるのは楽しい。

けれど、ずっと持っていた一枚が、ほんの少し手を加えたことで、また「明日のレッスンに着ていこうかな」と思える服へ戻ってくるのも、なかなか嬉しい出来事だ。

何年も前に選んだ服と、今の自分。

その間にできた小さな距離を、はさみ一本で縮めてみる。

そう考えると、タンスの奥は「もう着ない服」の置き場所ではなく、再発掘を待つものが並ぶ、小さな宝の倉庫なのかもしれない。

言わば、「タンスの奥のユニバース」だ。

憧れのミニマリスト。
いっそ全部、断捨離。

そんな考えがふと頭をよぎることもある。

けれど、その真逆を行くのが、我ら九十九デザイン発掘社。

好きなものは、ずっとそばに置いておきたい。

ひとつ、またひとつと集まった「好き」が、いつしかその人だけの景色になる。

それが、わたしたちの宇宙になる。


今、チャイコフスキーを選ぶなら

今回カスタムした Ballet ManiacsのチャイコフスキーTシャツは、メンズモデルは現在メーカーでも廃盤となっています。

レディースモデルも現在完売。

ただし、メーカーに在庫が残っている場合には、お取り寄せできることがあります。

気になる方はMaison de 9uatreまでお問い合わせください

 

そして、このチャイコフスキーのイラストを今から楽しみたい方へ。

現在Maison de 9uatreでご案内しているのは、同じイラストを使った Tchaikovsky sweatshirt

まだ夏の真ん中ではありますが、季節は少しずつ秋へ、その先には冬へ。

Tシャツとはまた違う一枚として、これから訪れる季節には、スウェットのチャイコフスキー先生もおすすめです。

チャイコフスキー先生は、まだMaison de 9uatreにいらっしゃいます。

▷Tchaikovsky sweatshirtを見る


今回のTシャツカスタムが突如始まったRouge Garnierの夏の午後は、九十九デザイン発掘社(Les 9uatre)のInstagramでもご紹介しています。

そこでは、編集部のチエリとイチコ、ルナ・カスカトール・カスカベ先生、そしてUn Deux Trois 9aféのマスターによる、もう少し賑やかな一幕をお届けしています。

あわせてお楽しみください。

 

※今回ご紹介したのは、Maison de 9uatreの店主が実際に所有しているTシャツを、自身の好みに合わせてカスタムした一例です。素材や縫製によって切り口の状態やほつれ方などは異なります。カットする場合は最初から大きく切らず、少しずつ試着しながら調整してください。

※「タンスの肥やT」は、みうらじゅん氏による造語です。


文:加賀サクラ(九十九デザイン発掘社)

 

 


 

 

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▷Maison de 9uatre

 

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