歳を重ねた身体の「揺らぎ」とどう向き合うか…
大人になってからバレエを続けていると、
ある日ふと気づく “身体の揺らぎ” がありませんか?
先週は軽やかに動けたのに、今日は脚が重い。
バーにつかまっても、いつもより軸が揺れる。
身体がなかなか温まらず、コントロールが難しい日がある。
こうした変化は、大人の身体にとってごく自然な現象です。
そして何より、努力不足や気持ちの問題ではありません。
むしろ、身体が年齢とともに再編成され、
「今日のわたし」 に合わせて働き方を変えている証なのです。
朝の強張りから始まる “憂鬱な目覚め” ― わたし自身の経験
わたしが自分の変化に気づいたのは、
ある朝、指がほとんど動かなくなっていた時でした。
目が覚めて最初に感じるのが、痛みと強張り。
布団の中でそっと手を握りしめても、
関節がぎこちなく、思うように動かない。
「今日もまた、この状態から始まるのだろうか……」
そんな気持ちが、目覚めと同時に胸に広がる日が続きました。
血行が滞っているのかもと温めたり、ビタミンが足りてないのかもと「iHerb」でサプリを片っ端からオーダーしてみたり、ホームローラーで全身をほぐしてみたり、とできること、思いつくこと色々試しました。
同時に骨もどうやらもろくなってしまったようで、ちょっと脇あたりにホームローラーを当てて横になっただけで、折れた??と思うほどの激痛。(実際には折れるまでには至らなかったのですが、ヒビが入っていました。)
完全に骨が「ウエハース」のようになってしまったのだ、と実感した瞬間でした。(のちに骨密度を測定したら、骨粗鬆症ギリギリのラインでした。)
(この“骨の揺らぎ”については、別途「番外編」にて詳しく触れます)
レッスン前の準備よりも先に、気力がそがれてしまうような朝。
一日の中で大好きだった朝の時間が、わたしにとって小さな絶望へと変わっていったのです。
外科的治療を選ばなかった理由
症状を調べると、わたしの場合ばね指や腱鞘炎の治療が有効として
「注射」「切開」が出てきます。
でもわたしは、そのどちらにも踏み切れませんでした。
・注射を繰り返すのは根本解決とは言いづらい
・切開は再発リスクもあり、バレエを続ける手に負担が大きい
・何より、“自分の手を傷つけたくない” という強い抵抗感
バレエを教える手は、わたしにとって大切な道具。
だからこそ、外科的な手段は避けたい という思いが大きかったのです。
婦人科での指摘──揺らぎの原因は「ホルモン変化」かもしれない
指の強張り、骨のもろさ、
これはホルモンバランスが変化しているのでは?という考えに辿り着きます。
随分とご無沙汰だった婦人科へ思い立って行ってみることにしたのです。
そこで医師から言われた言葉があります。
「これはホルモンの変化が影響している可能性がありますよ」
その瞬間、やっぱりか!と。
朝の強張り、むくみ、回復の遅さ……
散らばっていた点がひとつの線につながりました。
「年齢のせいだから仕方ない」ではなく、
“身体が新しいフェーズに移ろうとしている” という事実。
そう理解したとき、気持ちがすっと軽くなったのを覚えています。
そこでわたしは、その場しのぎの外科的治療ではなく、根本原因に対処すべくHRT(ホルモン補充療法) を選びました。
HRTを始めて感じた身体と心の変化
劇的な変化ではありません。
魔法のようにすべてが改善するわけでもありません。
でも──
・朝の強張りが明らかに減った
・指がスムーズに動き、レッスン前の不安が減った
・身体のこわばりが緩み、動き出しが軽くなった
・何より “大丈夫” と思える気持ちが戻ってきた
わたしにとって HRT は、
身体と心を再び同じ方向へ向けてくれた 静かな助け でした。
もちろん、治療が合うかどうかは人それぞれ。
けれど、大人の身体が揺らぐ理由のひとつに
ホルモンの変化がある という事実を知っておくだけで、
不安がひとつ減ります。
もし、これを読んでいる大人女性のあなたが、これまで感じたことがない不快感や痛みがあるなら、
それはあなたの人生が「次のフェーズに移行する準備段階に入った」というサインかもしれません。
それが小さな変化だとしても、見逃さず婦人科に行ってみるのも一つの手段です。
私のように何ヶ月も不調を抱えなくても済むかもしれません。
「年齢の変化は悪いことではない」──その根拠
わたしがそう思う理由は、次の3つです。
① 年齢の変化は“劣化”ではなく、身体の正常な再編成
筋肉・骨・関節・神経が、次のステージに適応しようと働く自然なプロセス。
② 変化に“仕組み”があるから、対処方法が見つけやすい
原因が分かれば、焦らなくていい。
揺らぎはコントロール可能な現象。
③ 大人は身体の感覚が豊かになる(これはバレエに有利)
微細な変化に気づける身体は、動きの質が洗練されやすい。
これは大人バレエ特有の“美点”。
「責めない」「比べない」という大人バレエの哲学
大人の身体は、日によって状態が変わります。
だからこそ、
・昨日の自分と比べない
・周囲と比べない
・“今できている部分” から育てる
この3つが、とても大切。
揺らぎのある身体は、
決して弱点ではなく、
その日のレッスンを導くコンパス になります。
身体の声を聞き取る力が育つほど、
踊りの質は静かに、でも確実に変わっていきます。
次回予告|その3へ、の前に番外編を挟みます
次回「番外編」では、「骨」について、深掘りしてみたいと思います。
わたしは大丈夫、なんて思っていたけれど…
ボロボロになる前にブレーキをかけて向上させる。
そんなわたしの取り組みをご紹介します。
文:quatre-quarts ballet studio 講師の「わたし」


