はじめに:思いがけない“ヒビ”が教えてくれたこと
バレエ人生が長いわたしにとって、
骨折やヒビが入るという経験はこれまでにも数回経験済み。
ところがある日、
ホームローラーで脇の下あたりをそっと当てて横になった瞬間、
「折れた?!」と思うほどの激痛。
病院に行くと、骨にヒビが入っているとの診断でした。
そのとき初めて、
“骨がウエハースのようにもろくなっている”
という自覚が胸に静かに落ちてきました。
「人生ほぼ日バレエ」の自負があったからこそ、
この事実は大きな衝撃でした。
こんなにも簡単に???
わたしは身体を日々動かしている。
筋肉も使っている。
軸も維持している。
では、なぜ骨は弱くなるのか──?
ここから、バレエと骨密度についての小さな探求が始まりました。
1|バレエは“骨に優しすぎる”という逆説
バレエは美しく、軽やかで、静けさがある踊りです。
● ジャンプは音を消すように着地する
● 踵から重さを落とさず、柔らかく乗る
● 衝撃は筋肉で吸収し、骨に負担をかけない
これはバレエの美学としては正しい動き。
でも実は──
骨密度を上げるという観点では、刺激が“足りなさすぎる”踊り でもあるのです。
骨は “衝撃・荷重の刺激” によって強くなるので、
優雅で静かな着地は逆に骨への刺激が弱い。
その事実を知ったとき、
自分の身体の謎がひとつ解けた感覚がありました。
2|整形外科医の言葉で気づいた「降り方」の違い
検査を受けたとき、整形外科医にこう言われました。
「踵を上げて、ドスンと降りてください。」
え?
バレエでは絶対にやらない動き。
静かに降りる。
音を立てない。
衝撃を逃す。
これが身に染みついているわたしは、この指示に衝撃を受けたと同時に、
どうしても「ドスン」と降りれなかったんです。
医師の意図はこうです:
● 踵を上げる → 骨に荷重をかける準備
● ドスンと降りる → 骨への衝撃刺激を与える
つまり、
骨は“負荷と衝撃”で育つ。
バレエはそれを極限まで避ける動き。
この価値観の対立が、
骨密度に対する理解を深めてくれました。
3|骨が弱くなった理由は“掛け算”で考える
わたしの場合、骨密度が落ちた背景には複数の要素が絡んでいました。
● 遺伝
● 年齢によるホルモン変化(→ そのためHRTを開始)
● バレエの運動特性(骨に優しい)
● 栄養吸収の問題(→ アルファカルシドールの処方)
どれか一つではなく、
これらが重なり合って “骨の揺らぎ” が生まれていた。
そう気づいたとき、
自分の身体を責める必要はないことがわかりました。
大人の身体は、
ひとつの要因で説明できないほど複雑で繊細なのです。
4|視力は良いのに骨は弱いという不思議
ひとつ面白い気づきもありました。
わたしは裸眼で生活できるほど視力がよい。
これは現代ではレアなのかもしれません。
理由はなんとなく心当たりがあって、
バレエはとにかく“目の筋肉”をよく使う踊り。
・視線のフォーカス
・遠くを見る → 近くを見る
・回転のためのスポッティング
・床と鏡と空間の把握
常に目を動かすから、視覚の筋肉が働き続ける。
つまり、
バレエは視覚機能には強い刺激を与える
でも
骨にはほとんど刺激を与えない
この対比がとても興味深かった。
身体って本当に正直で、
使った部分は強くなり、
使わなかった部分は静かに弱っていく。
5|わたしが今大切にしている“骨との対話”
骨の揺らぎは、恐怖ではなく“対話のきっかけ”になりました。
今わたしが取り入れているのはこんな小さな習慣です。
● 日常で少し衝撃のある動きを入れる(早歩きなど)
● バレエ以外の“骨に負荷を与える運動”を少し取り入れる
● HRTでホルモンの土台を整える
● アルファカルシドールで吸収を助ける
● 自分の骨密度を定期的に把握する
どれも無理はしない。
バレエを続けるために、
骨と仲良くするための静かな習慣。
おわりに:骨もまた“揺らぎ”ながら変化していく
骨密度の変化は、
不調ではなく “身体の次のフェーズのサイン” だと思っています。
大人のバレリーナは、
身体の声に敏感で、
揺らぎに気づける感性を持っている。
だからこそ、
骨との対話もきっと上手にできるはず。
揺らぐ身体を責めないで、
ただその変化を受け取りながら、
新しい踊り方へ静かにシフトしていく。
それが“大人バレエの美しさ”なんだと思います。
■ 骨のお話の続きは番外編2へ
骨密度の変化は“終わり”ではなく、
向き合い方を変えるための合図。
「番外編2」では、
骨密度検査でわかったこと、
医師の言葉がくれた希望、
そして“骨は回復していく”という意外な事実について
少し深掘りしてみたいと思います。
これまでのブログ『深呼吸のリズムで踊る、大人のためのバレエのススメ』
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文:quatre-quarts ballet studio 講師の「わたし」



